お役立ち情報|伝承力 ③

伝承力

第3回 仕事の『達成』を支える“知”の領域

仕事のスキルが向上する過程には、連続的にレベルアップしていける領域と、そうでない(非連続な)領域があります。業務を学ぶ初期段階は一般に連続の領域です。よくある現場の新人教育では、標準化度合いの高い基本的な作業単位(=タスク)から教えて、実践に入れていきます。しっかり基本を仕込んで作業を繰り返させれば、大方のケースで継続的に仕事のスキルが上がります。

ところがあるレベルに来ると、同じ様にいかなくなってきます。学習者が“壁”にぶつかるのです。「言われた事はやれるが、自ら判断が出来ない」、「通常業務は無難にこなすが、変化や異常の対応がまだまだだ」という段階が現れ、教える側も“打つ手”が見えず往生してしまいます。自分はいつのまにか出来るようになったのだが、どう教えれば良いかが分からない、という話が共通して出てきます。ここが非連続な領域です。

生まれて始めて自転車を“こいだ”経験を思い返して頂けるでしょうか。その瞬間とは、皆さんが”壁“をひとつ乗り越えた局面だったのではないかと思います。クロールの息継ぎや箸の使いこなし等も同様で、この種のスキル習得には必ずどこかに”壁“を越える局面が現れます。

仕事も同じなのです。あるところに来ると次の水準に向かうにあたって、すぐには越えられない“壁”が出てきます。マニュアル通りにロボットを組み立てるスキルと、完成したロボットの不良を察知するスキルの間にはGAPがあります。このGAPは単純なタスクの集積では越えられないもので、故に同じ教え方では進み得ないものなのです。

このGAPの中には、上位にある業務の達成(=アチブメント)を支える膨大な“知”が詰まっています。その本質は暗黙知と呼ばれるものです。『伝承力』研修では、受講者の皆さんに自らの暗黙知に迫って頂き、中身にあるものを後進に伝えるスキルを学んで頂いています。内容を文章で説明することは非常に難しいのですが、ここでは仕事の達成(アチブメント)の観点から暗黙知の性格について、可能なところをお伝えしたいと思います。

例えばサービス業では“顧客満足”を大事にしますね。タスクレベルでいくら完璧な業務をしても、お客が満足しなければ仕事が達成されたとは言えない世界です。タスクは○でもアチブメントが×なら合格はもらえません。 では○に必要なものは何か。暗黙知はまさにアチブメントの為の“知”なのです。

そこには個別経験から得たもの(経験知)があり、関わった人々の影響(関係的な知)があり、満足を届ける為に自ら培った行動や習慣(実践の知)があります。そしてこれらは無秩序に保持されているのではなく、洗練の度合いに応じて強化される一定の『傾向性』を持っています。この“知”は文脈によって様々な形で現れる為、捉えにくいものです。一見して統一が無い様でも、底には同じものが流れている - そんな性格を持つのです。

暗黙知は自らの経験や人間関係と繋がる個別的な性格の“知”です。それには生き方、働き方に通じる価値や信念が含まれてきます。身体に近い感覚的な“知”でもあります。かつての徒弟制度や親方舎弟の関係の中に技が伝承されてきた背景も、こうしてみると多少は納得ができるのではないでしょうか。

オイコスメンター依田真門 コラム

オイコスメンターの依田真門が、システムエンジニアの皆様に向けておくるコラムです。

▷ 第一回「OJT再生に求められる伝承力」
▷ 第二回「組織に活力を与えるベテラン社員の“伝承力”向上」
▷ 第三回「仕事の『達成』を支える“知”の領域」

お役立ち情報