お役立ち情報|伝承力 ②

伝承力

第2回 組織に活力を与えるベテラン社員の“伝承力”向上

社員が日々の仕事で培う”知“の資産は、企業の商品やサービスが他社から差別化され顧客から選択される際の源泉です。それは同時に、組織が環境変化に対応し、自ら改善修正を行っていく上でも欠く事の出来ないものです。

“知”の資産の多くは図面や仕様、データなど形式化された形で保持されています。しかし現実の文脈において、何を優先すべきか、どこまで譲歩してもいいか、といった実践的な”知”は、個人の内側に見えない形で保たれているものが大部分です。そうした“知”は、人から人への伝承を通して組織内部に残していくしか資産として守る事が難しいものです。

ベテラン社員の伝承力を高める狙いは、後任者や若手社員に企業内の”知“を移転させ、何よりも今アクティブに活用されている実践のノウハウを社内で共有する事です。しかし経験豊かな社員が自らの知的資産を再認識し、発信力を持つ効果はそれに留まりません。伝承力の向上は将来に向けての企業ポテンシャルを高め、組織を活性化するいくつかの重要な変化を起こす事も、意識しておくべきでしょう。

その第一は、潜在的“知”の顕在化です。社員が蓄積してきた“知”の資産は膨大ですが、大部分は目に見えないものです。殆どが“暗黙知“的知識のままで、個人の中に埋もれています。しかし、それらが体系的に整理され、組織的に活用できる形で顕在化されれば、資産としての価値に変わります。それは、企業力の向上を意味します。

第二は、“知”の顕在化から活用の道が開かれる事です。顕在化は“知”の結合の道を開きます。実は多くの“知”が、IT化等の影響で元来の姿のままでは活かせなくなり、他の“知”との連結が断たれたままで、個人に眠っていると考えられています。ベテラン社員の発信力が増すことから、埋もれていた“知”が他の“知”と繋がり、また新しい文脈に置かれて、新たに活かされる可能性が広がるのです。

第三は、組織内の関係知・共有知が増す事です。過去20年間、産業構造の変化に伴って日本企業の職場コミュニティーの弱体化が進んだと云われます。かつては組織内に溢れかえっていた、“ウラ話”、“ウワサ話”が聞こえなくなり、仕事を背後で支える“人”に関わる多面的な情報など、周辺的な知識も低下しているのです。 ベテラン社員の発信が強化され、組織に蓄積されてきた多様な知の共有が進むことは、タテに流れる業務を横糸で繋ぎ、社員の視界を広げる効果をもたらします。

そして最後は、発信を通じてベテラン社員自らの存在意義が再確認され、組織が活性化される事です。もしかすると、この意義が最も大きいのかも知れません。

一時は企業を支えた偉大な“知”の多くが、時代の流れと共に活用の道を断たれ、それらを担ってきたベテラン達が力を発揮する場も減ってしまいました。しかし彼らが磨いてきたものは、決して無価値になった訳ではないのです。伝承スキルの中核は、自らに埋もれる知的資産の意味を再認識し、語れるようになる事です。この意味づけは、上記したそれぞれとも重なって、伝承を担う当事者を活性化する原動力となります。

企業内部の知的資産をコミュニケーションチャンネルに乗せると同時に、コミュニケーションを担う社員一人一人を活性化させる。ベテラン社員の“伝承力”を向上させる事の効果は、広い範囲に及ぶ事が期待されるのです。

オイコスメンター依田真門 コラム

オイコスメンターの依田真門が、システムエンジニアの皆様に向けておくるコラムです。

▷ 第一回「OJT再生に求められる伝承力」
▷ 第二回「組織に活力を与えるベテラン社員の“伝承力”向上」
▷ 第三回「仕事の『達成』を支える“知”の領域」

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