お役立ち情報|伝承力 ①

伝承力

第1回 OJT再生に求められる伝承力

OJT(On-the-job training)がうまくいかない、という話を聞きます。
入社数年が過ぎ、そろそろ中核的な業務をやらせたい、という辺りまできて一線を越えられないケースが特に多い様です。

やる気もあるし真面目。個々の業務はそつなくこなすので任せるようにしているのだけれど、一人では未だ心もとない。自信をもって判断できるレベルに上がってこない。自分達はいつの間にかやれるようになっていたんだが、一体何が違うんだろう。そんな風に悩んでいる管理職の方が少なくありません。

OJTは何故機能しなくなってきたのでしょうか。いくつか指摘されています。右肩上がりの時代が終わり、社内でのキャリアが描きにくくなって仕事の魅力が低下した事。終身雇用が崩れ、個人と組織の関係が変わってきた事。そうした背景の中に職場の共同体的結びつきが弱まってしまった事、など。

私が会社に入った’80年代前半当時は、2-3人がグループになって重複し合いながら仕事を担当するケースが一般的でした。残業も多かったし、終わって飲みに行く事も頻繁にあったので、そこで案件情報を共有したり、出来事を共同で振り返る様な事もよくやっていました。

先輩達の話を横で聞いているだけで業務の全体像が見えたり、中々聞けない上役の失敗談が聞けたりする。それまで腑に落ちなかった上司の指摘が、そこで突如分かり始める、といった事もありました。我慢も強いられましたが、頑張ればチャンスが得られるという確信も持てる環境でした。かつてのOJTは、こうした共同体的繋がりや、経済の拡大を前提とした組織展開の中で機能していた面が大きいのです。

その右肩上がりは過去のものとなり、組織を取り巻く環境も一変して、かつてあったOJTの前提は崩れています。組織が個人を包み込むように育成出来た時代は終わり、伝承者が効果的なメッセージを届けて道筋を示さなければ、人を育てられなくなくなってきました。そして今伝える側に、環境と学習者のギャップを繋ぐ能力が求められてきているのです。

では具体的にどの様な力が、求められているのでしょうか。私は3つあると考えています。第一は業務の全体像を系統立てて説明し、学びの道筋を示す力です。共同体的関係が強い時代には、全体像を自然に意識出来るしくみがありました。しかし今はそこを、伝える側が説明しないといけなくなってきています。そして更に、必要な技や知識を無理なく効率的に学ぶ手順も、個別に考えてなければならなくなっています。

二つ目は仕事を為す上で重要な、しかしながらしばしば語りが難しい仕事の“勘所”を伝える力です。 伝承力の中核部分です。一般にそこは“暗黙知“の塊の様な領域であり、業務中には殆ど”意識されない“為に厄介なところです。その”意識されない“部分を見える化し語り得る姿にしていく事で、伝承の質と密度を格段に高いものとすることが出来ます。

最後は、総合的な実践力を高めさせるためのイメージング。仕事を成就させるためのイメージを、学習者に与える力です。そこにはロジックで語りえない部分をストーリーで伝える力、比喩力、内省を促す力、ヒントを与えて自ら掴みに来させる力などが含まれます。水泳のコーチが選手に魚になった気分をイメージさせたり、体験を振り返らせながら問いを発して気づきを促す力などがこれにあたります。

時代の変化と共に機能しなくなってきたOJTを再生させるには、伝承を担う側の役割を拡大しなければならなくなっています。そしてそれを実現させるためには、より明確に自らを語る高いレベルの自己理解と、伝えるスキルの向上が求められているのです。

オイコスメンター依田真門 コラム

オイコスメンターの依田真門が、システムエンジニアの皆様に向けておくるコラムです。

▷ 第一回「OJT再生に求められる伝承力」
▷ 第二回「組織に活力を与えるベテラン社員の“伝承力”向上」
▷ 第三回「仕事の『達成』を支える“知”の領域」

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