お役立ち情報|ITエンジニアのための交渉エッセンス ③

ITエンジニアのための交渉エッセンス

第3回 交渉の心構えとは

前回は、CNPの4つのフェーズの内の前半である「理解」「協働」を解説した。今回は、「創出」「合意」という後半フェーズと交渉力アップの方法について述べていく。

CNPのフェーズは、そのフェーズ毎に交渉が持たれることもあれば、1回の交渉の中ですべてのフェーズが行われることもある。どのような形で行わ れたとしても、フェーズを意識していくことが大切である。ウォーターフォール型の開発と同様、きちっとフェーズを踏んでいく方が、結果として手戻りのない 効率のよい交渉につながっていく。

提案を通じて相手を巻き込む

創出フェーズは、これまで得られた相手の情報やお互いに認識した共通のゴール設定から、具体的な解決策を提示していくフェーズである。この時点で 注意すべき点は2つある。ひとつは、相手のメリットを中心として提案を考えること。2つめはその提案という手段から相手を巻き込んでいくことである。

一つめの相手のメリットを中心として提案を考えることは、それによりこちらが味方や仲間であることを印象づけることができる。ちなみに、案そのも のが相手のメリット中心に考えられていることと、相手へのメリットを伝えることは、全く別のことであるので注意してほしい。案の中身はこちら都合の案なの だが相手にメリットがあるように伝える、ということが行われることも多い。しかし、そうなると、どうしてもそこに矛盾が生じてしまう。案を相手に提示する ときは、相手のメリットを伝えるとともに、そのデメリットも正直に伝えることが大切である。包み隠さず話すということが、相手の心を開き、相手をより巻き 込みやすくしていく。

提案すると、当然ながら質問、突っ込み、反論などが入り、いろいろなやりとりがなされる。そのときにあなたが意識して行うことは、提案を通すため にあれこれやりとりすることではなく、相手の考えや相手のアイデアを引き出し、そして解決に向けて相手を巻き込んでいくこと。これが2つめの相手を巻き込 むということである。

たとえば、提案をしていろいろ質問された場合に、説明よりも“ではどうなると良いのか”と相手に質問し、相手の知恵を引き出す。そして必要であれ ば、相手から出た意見やアイデアを新たな解決策案として検討の場に乗せていく。自分の考えが盛り込まれた案を自身で否定をしたくはない、という人間の心理 を活用するのである。そして、案のメリットとデメリットを比較検討しながら、絞り込んで最終的な合意に向かっていく。

クロージングこそしっかりと

最終的に相手と「合意」していくことがクロージングである。しかし筆者が見るに、このクロージングの詰めが甘いプロジェクトリーダーやSEが多い。そのため、次のポイントに注意してしっかりやってほしい。

まずは合意するという意欲を示すことである。合意の段階になっても、相手に決めてもらおうと“待ちの姿勢”の人を多く見かける。最終的に判断するのが相手だとしても、「ぜひ決めたい」「合意したい」という意欲を見せることが大切である。

相手に決めてもらうためにサポートすることも大切である。相手が決断をしないのであれば、「何が引っかかっているのか質問する」「プラスアルファ のアイデアを出す」「相手の判断材料を提示する」など、合意してもらうためにできる限りのサポートをする必要がある。もしあなたが買い物に行き、最終的に 買うかどうか悩んだときに、店員がどうあなたをサポートするかを思い出してほしい。待ちの姿勢でいることは決してないのではないだろうか。なぜなら、買っ てもらわないと接客した意味がなくなってしまうからだ。交渉も同じである。合意しなければ意味がないのである。

そして最後に、合意事項の確認をすることも忘れないようにしてほしい。口頭や記録などで、お互いに齟齬(そご)がないかどうかをしっかり確認した い。合意したとたんに安心して、確認を曖昧なまま終わらせてしまう人も多い。後になってから認識の違いが発生しないようにしたい。

交渉力を強化するために

ここまで、交渉の型のひとつとしてCNPの解説をしてきた。この型を参考にしながら、ぜひ自分なりの型を創っていってほしい。

そして、最後になるが、交渉力の強化のために今すぐできるやり方を伝えたいと思う。それはロールプレイをこなすことである。

営業マンはよく、ロールプレイを通じて接客技術や交渉力を強化する。しかし、プロジェクトリーダーやSEが交渉のロールプレイをしているという話 は聞いたことがない。しかし筆者に言わせれば、交渉で問題になることは優先順位、スケジュール、費用、リソース分担など、どこも似ているのではないだろう か。

大切な交渉事であれば、想定問答を考えたり、実際に仲間とロールプレイをすることでかなりの交渉力強化になると思う。もし相手がいなければ、一人二役ロールプレイでもよいだろう。やらないよりはよっぽどよいと思う。

IT業界を取り巻く状況を考えると、どうしたって交渉力のアップは必須である。ぜひ、意識して取り組んで、腕を磨いてほしい。

ITエンジニアのための交渉エッセンス

オイコスメンターの大坪隆志が、システムエンジニアの皆様に向けておくるコラムです。

大坪隆志
大坪 隆志 (おおつぼ・たかし) オイコス メンター
筑波大学社会工学類卒業後、1987年、株式会社資生堂に勤務。情報システム部でシステムエンジニアとして9年間の経験。その間に企画、開発、運用、教育 など幅広い経験を積む。社内選抜で慶応大学大学院へ派遣され人事・組織論を学ぶ。(修士号取得)その後、国際事業本部で経営企画業務にたずさわる。 2001年システムコンサルタント、人事組織コンサルタントとして独立。あわせて、コーチングのプロコーチとして活躍。 2003年よりオイコスにて講師(メンター)として活躍中。 日本コーチ協会 東京チャプター幹事

▷ 第一回「交渉力の原理原則と型を身に付けよう」
▷ 第二回「交渉の型を身に付けよう」
▷ 第三回 交渉の心構えとは

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