お役立ち情報|コンフリクトマネジメント・チームマネジメント コラム ②

コンフリクトマネジメント・チームマネジメント コラム

コラム2
「水戸黄門を超えて
21世紀に求められる紛争解決スキル」

「水戸黄門」、「暴れん坊将軍」など、人気の時代劇の共通点はなんであろうか。
真実を知った強きものが弱きものを助けるという点にあると思う。それぞれの主人公は風車の弥七、お銀、お庭番などの手下を使い、事件についての詳細な情報を知り、罪なき人々を落としいれようとする悪代官、悪徳商人のところへ出向く。主人公も手下も共に武術、格闘技の心得はある。が、けして武力では解決しない。最後は悪人たちの罪状を明らかにした上で、それ相応の決定を下す。なぜ、下せるのか。それが葵の紋所であり、将軍の権威があるからである。つまり、権威が真実を保証するのである。もし、越後のちりめん問屋の隠居が同じことをしたら、切り捨て御免で、正義はくじかれてしまうだろう。悪をくじき、名も無き善意の庶民の問題を解決する「お上」を期待するからこそ、このような時代劇の人気が保たれているのかもしれない。

それでは、平成の世の問題解決のあり方とはどのようなものであろうか。最近は法律家の出演する番組も増え、「訴えてやる」の捨て台詞も耳になじみだしてきた。しかし、番組にもあるように、法律の適用の仕方は必ずしも一様ではない。弁護士の法律の解釈や応用のさせ方で、答えが一つとは限らないことは周知の事実である。さらに、実際の訴訟となれば、費用と時間は膨大になる。そして、当事者の心理的満足が得られるかといえば、その保証はない。なぜなら、裁判でもっとも重要視されることは法律上の正しさであるからだ。こうした裁判の限界に対して、代替案としてでてきた紛争解決の方法に、協調的交渉とミディエーションがある。できるだけ、当事者が問題解決の過程に主体的にかかわり、当事者間で紛争に対する解決案を創出し、合意を形成しようという方法である。協調的交渉は当事者同士で行う問題解決であり、ミディエーションは第三者が介入して、当事者の間に会話を作り出し、問題解決を手伝う方法である。ただし、前述した水戸黄門や吉宗と異なるのは、その第三者(ミディエーター)が地位や専門性としての権威から解決案を与えるのではなく、当事者同士が話し合い、解決案を作り出すことをサポートする役であることだ。

私はニューヨークのコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジの協調・紛争解決国際センター(International Center for Cooperation & Conflict Resolution)で、紛争解決の方法とその教授法を学んだ。理論だけではなく、体験学習を通じた授業は「目からウロコ」の連続であった。武力、地位、権威、資産などの力による解決ではなく、当事者双方の理解を深め、お互いの新しい視点から問題を捉えなおし、解決していこうというのが、協調的な問題解決の主旨であるが、その基礎となるものがコミュニケーション行動である。つまり、コミュニケーションは行動であるので、頭の理論武装だけでは机上論になってしまう。自分の物事を見る眼、感じる力、話す力、聞く力など、様々な要素を含む行動を求められるのである。こうしたコミュニケーション能力はコンフリクト・マネジメントだけでなく、コーチング、ファシリテーション(参加者間の対話の促進)など、昨今のビジネス・リーダーの必須能力と共通しているものである。

現在、私は大学、企業、地方自治体などで、コンフリクト・マネジメント、異文化コミュニケーションなどの授業や研修に携わっている。欧米で開発された理論や教授方法を日本の現状に合わせつつ提供している。研修に参加した人は日本人のほかにも、中国人、韓国人など二〇数か国はくだらない。各国の文化の異なりよりは、最終的には個人差のほうが大きいという立場をとっているが、それでも、日本人参加者全員にあてはまる問題もいくつかあるように思える。その一つは、自分のシナリオにない状況に入ると、心の余裕を失い、笑顔が減る。試行錯誤をしない。また、与えられた仕事を優先するあまり、不確実な状況での人間関係の形成に積極的な行動が起こせないなどがあげられる。こうした日本人の不確実性に弱い特性はすでに一九七〇年代のホフステードの研究に指摘されていたが、二一世紀においてもあてはまっているようである。

紛争が生じるのは相手と自分が異なるからである。自分と全く同じ人が存在することはない。予定されたシナリオもないのである。だからこそ、異なる相手とどのように関係をつくり、協働していくかというスキルが求められているのではないだろうか。二一世紀の紛争解決は、水戸黄門や暴れん坊将軍のような「お上」の裁きだけでは不十分なのである。

>> 3「顔のないコミュニケーション」へ

コンフリクトマネジメント・チームマネジメント コラム

弊社メンター 鈴木有香による、コンフリクトマネジメントに関するコラムです。

鈴木 有香 オイコス メンター

早稲田大学紛争交渉研究所客員研究員 異文化教育コンサルタント

▷ 1「ウィン/ウィンって何?国境紛争エキササイズ」
▷ 2「水戸黄門を超えて21世紀に求められる紛争解決スキル」
▷ 3「顔のないコミュニケーション」
▷ 4「ジブリッシュ: 演劇的手法によるコミュニケーション・トレーニング」

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